miyoshi148-L
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歴史ある伝統文化の継承を考える鵜飼がいつ頃、どこで始められたかはわかりませんが、少なくとも2千年以上前に、東アジアで始まったと考えられ、今は日本と中国だけで行われています。また、鵜飼は人と動物が触れ合う中で築いた信頼関係を基に協業して行う世界的にもまれな生業で、東アジアでの川と人と自然の関わりを考えるうえで欠かせません。三次鵜飼は、江戸時代後半の記録に「一夜に数多く獲り、(中略)日々を不自由なく暮らしている…」とあるように、漁だけで生計を立てていました。そこでは、川という限られた場所でより多くの漁獲を得るために、様々な工夫を凝らし技が磨かれました。その技術力が明治時代に開かれた全国水産博覧会での高評価・受賞につながり、漁ぎょろう撈としての鵜飼の技は日本一といっても過言ではありません。一方、生業としての鵜飼であったことが、日常のありふれた光景となり、地域の特色ある財産として深く認識されなかったのかもしれません。今年、鵜の大量死という残念な出来事が起き、「三次鵜飼の今後」に関心が寄せられるきっかけとなりました。しかし、その水面下には二つの大きな問題があります。一つは三次鵜飼の伝統技術の継承の危機という問題です。漁撈としての鵜飼を極めた元鵜匠の技を記録・保存し継承できる今が、最後のチャンスです。もう一つは、三次鵜飼を取り巻く「つながりの環わ」が切れかけていることです。三次独特の川舟、鵜籠、照明等の品々、加えて遊覧船の船頭の確保と技術継承、観光客、さらには川の環境や景観と様々な要素がそろわないと三次鵜飼は成り立ちません。この「つながりの環」を保つため、鵜匠をはじめ関係者は、「三次鵜飼の伝統を守り、継承する」という熱意をもって取り組んでいます。三次は江の川の恵みのもと、生まれ・栄えてきたまちです。三次鵜飼は今も私たちと川を結び付ける数少ない絆の一つであり、「川のまち」という三次のアイデンティティーをつなぎとめる役割も果たしていると思います。人と動物が協業する伝統ある生業の一つ「鷹狩」が、ユネスコ無形文化遺産に登録されているように、「鵜飼」も新たな高みをめざせる大きな可能性を秘めています。●乗降場所 鵜飼乗船場(十日市親水公園内)●遊覧場所 馬洗川「巴橋」周辺●乗船料金 大人2,500円、 小学生1,250円 ※9月の毎週月~木曜日は、お得なサービスデー ※金・土曜日は割増料金あり ※貸切船・宿泊パックもあります。問・鵜飼乗船予約 (一社)三次市観光協会☎(0824)63-9268(0824)63-1179Prole広島県立歴史民俗資料館主任学芸員 葉は杖づえ 哲てつ也やさん昭和63年、広島県教育委員会に採用。専門は考古学、民具学。江の川の漁撈文化の調査・研究に携わり、そのうち民具については、平成11年に「江の川流域の漁撈用具」として国重要有形民俗文化財の指定を受けた。広報みよし 2016.7月号5特集 三次の鵜飼

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