miyoshi172L
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多くの観光客でにぎわう奥田元宋・小由女美術館やトレッタみよしからほど近い、東酒屋の丘陵地。35‌haを超えるぶどう畑が広がります。この地で栽培されるぶどうが「三次ピオーネ」です。三次ピオーネ生産組合がつくるピオーネは「黒い真珠」とも呼ばれ、最高級ぶどうとして県内外で人気を博しています。徹底した栽培管理により、市場のニーズに応える安定生産を担う農家は、現在19戸。すべての組合員がぶどう栽培を中心とする専業農家です。昭和49年7月、県営事業により作られたぶどう生産団地の栽培者募集に応じた農家24戸で生産組合が結成され、ぶどうづくりがスタートしました。組合に入って39年目の片山正幸さん最高級ランクのぶどうを詰めて販売される、奥田元宋・小由女夫妻の作品がデザインされた化粧箱は、贈答品としても人気が高い。~ぶどう農家のプライド~子ども・孫の代まで続く、誇れるぶどう産地をめざしては、「当初は玉張りも悪く、房も小さかったため、栽培には本当に苦労した」と振り返ります。当時、三次市で栽培されるぶどうは、マスカット・ベーリーAやデラウェアがほとんどで、ピオーネのネームバリューはそれほど高くありませんでした。現在の地位は、先進地への視察や研修会開催など、試行錯誤しながら積み重ねられた技術の賜物です。その後、昭和63年には三良坂ピオーネ生産組合が、平成6年には広島三次ワイナリーが設立され、ぶどうの栽培が市全域に広がりました。片山さんが「他の果物と比べても、これほど手のかかるものはない」と話すとおり、ぶどうの栽培には、枝の管理や房づくりなど、年間を通じてたくさんの作業が必要です。組合で生産される約500tのぶどうの収穫期間は約3カ月。この期間に、毎年楽しみに待っていてくださるお客様にぶどうを届けるため、1年間休みなく作業が行われています。組合の設立から44年。三次ピオーネ生産組合では、世代交代も順調に進み、現在の組合員の平均年齢は49歳。「自分だけの経営ではない。後継者を育て、組合員を確保していくことで、子ども・孫・その次の世代まで産地をつなげていきたい」と話す片山さんをはじめ、組合では惜しみなく技術や知識を伝えてきました。また、組合員それぞれが担当のほ場を持ち、個人の役割を明確にした「ほ場責任分担制」の導入や外部の就農希望者の受け入れなど、他の産地に先駆けた仕組みづくりにも取り組んでいます。「(仮称)みよしアグリパーク構想の事業化も見据えて、今後も生産基盤の維持に取り組んでいく。いろんな人がぶどうを作りたい・農業をやりたいと思ってくれるような仕組みを作っていきたい。農業が今後も発展し、農業を通じて、三次が盛り上がっていけばこの上ない」と力強く話す片山さんの目には、農業の明るい未来が見えているに違いありません。「お客さんに美味しいと思ってもらうぶどうを作り続ける」ため、三次ピオーネ生産組合の挑戦は続きます。農事組合法人三次ピオーネ生産組合片かた山やま 正まさ幸ゆき さん三次市畠敷町生まれ。昭和54年から、第2世代として三次ピオーネ生産組合でぶどう栽培に取り組み、現在は生産組合の副組合長も務める。平成26年には、長男・正彦さんが後継者として組合に参画。親子2世代で約2haの畑を管理する。※「三次ピオーネ」はJA広島果実連、「黒い真珠」は三次ピオーネ生産組合の登録商標です。※ 写真提供:JA広島果実連広報みよし 2018.7月号6

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