備北のかがやき第17号
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まだ春も遠い庄原市東城町田森地区。山々に囲まれた森閑としたお社。あたりに感じる動物の気配。密かに聞こえる鳥のさえずり。雪解けの水音。ここで出会ったのは、国指定の重要無形民俗文化財「比婆荒神神楽」。中世の荘園をその名の由来に持つ地域で、祖霊信仰の神楽が継承されている。「打うつ立たて」の太鼓や笛、鉦かねの音がリズムを刻む。地を這うように唄いが始まる。登場した神々が緩やかに舞はじめる。いつしか舞の動きが加速すると、次第に自分の存在が消えてゆくのがわかった。祖霊神と荒ぶる神の鎮魂を願う比婆荒神神楽の姿を垣間見たような気がした。ナビゲータ Sさん広島市在住、23歳。趣味は野球観戦。菊池選手の大ファンというカープ女子。国指定重要無形民俗文化財比婆荒神神楽 本山三宝荒神に奉納される祖霊信仰の神楽で、鎮魂の要素を色濃く残し、特に託宣(神がかり)の神事を伝えていることが全国でも貴重な存在とされている。このため、広島県では唯一、重要無形民俗文化財として国の指定を受けている。毎年行われる小神楽とともに、式年(13年目、33年目)の大神楽は盛大かつ厳粛に執り行われる。伝統文化継承のため月2回「比婆荒神神楽子ども神楽塾」「比婆荒神神楽女組」の稽古が行われている。住 庄原市東城町粟田1715番地1問 田森自治振興区☎ 08477-2-0661たもりの景観庄原市東城町田森地区(比婆荒神神楽の発祥の地) 古くは関白藤原道兼(京都東山の粟田口の粟田殿)の領有する荘園であり、江戸時代は広島藩国家老上田家の所領地であった粟田村とやはり広島藩主の直領地であった竹森村、森脇村が合併してできた歴史ある地区。「黒がねどころ」といわれ、木炭と和牛と鉄の生産を誇っていた。現在の田の多くは「鉄かんな穴流し」の跡地で、砂鉄を採取するための水路は用水路となり、砂鉄を採った後の大量の土砂を堰き止め畦を築き、田を造成した。産業遺産として放置されることなく、人と自然が織りなす美しい田園風景を見せる。神楽面の裏側 面の裏側を拝見する機会はめったにない。鑿のみの痕も荒々しい仕上げは、現代の磨かれた滑らかな仕上げとは違い、むしろ顔に着けると顔の凹凸にピタリと合い、口上を述べる時の口の動きを妨げることもない。【参考文献】 1.神々の棲む里への道案内 田森自治振興区編 広島県庄原市 平成27年3月刊      2.東城町の文化財 東城町教育委員会編 東城町教育委員会 平成8年3月刊      3.東城町史古代中世近世資料編 東城町史編纂委員会編 東城町 平成6年9月刊deeppoint私の杵明神面名(集落の単位)の信仰の中心として本山三宝荒神が祀られる祠は、地区内に優に百を数えるという。庄原市以前から気になっていた庄原市と三次市。友達を誘って、興味津々…出発。ちょっとディープだけれどなぜか惹かれる私の「びほく旅」。以前から気になっていた庄原市と三次市。友達を誘って、興味津々…出発。ちょっとなdeep私の比婆荒神神楽保存会代表 横山 邦和さん(写真左) 自治体の議会議員や住民組織の会長を歴任。代々神楽を継承する家に生まれ、比婆荒神神楽の神事、公演、「子ども神楽塾」での指導と多忙な日々を送る。 「今の子どもたちは覚えが良い。優秀な子どもたちだ」と目を細める。面はやや上に向けたり、逆に伏せることにより、喜怒哀楽を表現する。能舞の場面を謂れのある面を手に取って教えていただく。22

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