神石高原12月号
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神石高原町読書感想文コンクール入賞者決定! 町では読書への関心を高め,積極的・自主的に本を読むきっかけづくりとして,8月を「神石高原町読書月間」と定め,読書感想文を募集し過去最多の527点の応募をいただきました。 その作品の中から,各部門の最優秀賞・優秀賞を選び12月8日,読書のつどいで表彰者に賞状と記念品が贈られました。入賞者は次の皆さんです。「教養のまちー神石高原町」「後退するか前進するか」三和中学校2年 川かわ上かみ 歩あゆみ私はこの夏休みに井伏鱒二著「黒い雨」を読んだ。この本は,広島に投下された原爆で市民が与えられた惨事を被害者と「黒い雨」によって原爆病に蝕まれていく姪の矢須子とを苦しく不安な日常の中でいたわりながら生きるという閑間重松の話だ。私は,このお話の舞台である広島に住んでいて,原爆の本を見つけ手にとった。開くと八月六日の悲惨な情景が広がっていて,今の豊かな自然からは想像できない真っ暗く死体の転がっている広島はなぜこんなことになってしまったのか,それを知るために読んだ。八月六日の八時十五分,閃光と轟音がしたと思った時には広島は見渡す限り焼け野原になっていたという。翌日の八月七日の閑間の日記には「広島は焼けこげの街,灰の街,死の街,滅亡の街。累々たる死骸は,無言の非戦論。」とある。この文からいかに原爆が恐ろしく,腹立たしいものかが想像できる。そして,広島は悪くないのに罪なき人々が殺されてしまった事が分かった。閑間の姪もまた,原爆投下後に降った放射能を含んだ雨「黒い雨」を浴び結婚を断られてしまった。そして,後遺症は矢須子の体を蝕んでいった。こんなにも苦しい当時,叶わない願いだと分かっていながら最後まで「今,もし,向こうの山に五彩の虹が出たら矢須子の病気は治るんだ」という矢須子を想う閑間の行動は閑間自身の暗くなった心にとって明るい光となり安心させようとしていたのだろう。私は一年生の時に平和学習で人々の想いを学んだ。「正義の戦争より不正義の平和の方が良い」今の日本は領土問題で外国ともめている。領土を守るのはとても大切である。しかし,閑間の言葉を聞くと他に守るものがあると思う。今は「主張」で済んでいるかもしれないが,このままではいつかまた同じ過ちを繰り返してしまうかもしれない。自ら折れることも時には必要である。国民は少しくらい領地が減っても構わないはずだ。命より大切なものはない。政府は何にこだわっているのだろうか。過去の失敗があるからこそ今の平和があるという事を忘れてはいけない。ニュースを見ていると「はだしのゲン」を子供に見せるのは良くないという協議がされているそうだ。怖さを味わう為,否定はできないが過去は無かった事にはできない。子供たちが大きくなって次の世代へ伝えていくためにも知識をつけてあげる事は必要だ。もしも原爆の事実を伝えていかなかったら……。「別に伝えなくても良い」と思っている人も中にはいるだろう。しかし,そうすると平和とは何か分からなくなる。そうすると本当に日本は同じ過ちを繰り返していくだろう。そう考えると原爆ドームを残している広島を誇りに思う。被爆関係者が減っていく中で私たちの世代がどれだけ責任を持って伝えていくかが過去の過ちを繰り返し,周りを巻き込み過去へ後退するか平和な未来へ前進するかを大きく左右すると思う。私は前進していきたい。私は原爆投下という過去から得たこの縁や優しい人々,温かく見守ってくれる家族が大好きだ。そしてこの平和な世界が大好きだ。いつまでもこれらの大切なものを守り続け,さらに増やしていきたい。そのためにも,原爆についてを次の世代へ伝えていきたい。みなさんにも是非「黒い雨」を読んでもらい,平和について今一度考えてほしい。【小学生の部】最優秀賞:出内 里佳(油木小3年)優秀賞:旗手  楓(来見小4年) 〃 :田邊瑠彌捺(三和小5年) 〃 :逸見 莉子(油木小6年)【中学生の部】最優秀賞:古森 茉文(神石中2年)優秀賞:山本 敬子(三和中3年)【高校生の部】最優秀賞:小里 成美(油木高1年)優秀賞:矢野乃佳(上下高2年)【黒い雨の部】最優秀賞:川上  歩(三和中2年)特別賞:眞澤 洋枝(江田島市)優秀賞:大杉 幸恵(油木高3年) 〃 :山本  大(三和中1年)(敬称略)なお,平成25年度神石高原町読書感想文コンクールの作品は,審査委員長 皿海達哉(ふくやま文学館館長)さんに講評していただきました。また,全体の優秀作品集・総評を町ホームページに掲載しています。最優秀賞【黒い雨の部】32013 12月号

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