神石高原1月号
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「「黒い雨」を読んで」油木高校3年 矢や川がわ 大だい貴き「黒い雨」と聞くと,六十九年前の八月六日,広島に落とされた原爆によって降った黒い色をした雨だなとすぐに思い起こしました。この黒い雨には,放射能が含まれていて,この雨に体が触れたり,飲んだりすることで被爆してしまうのです。この物語に登場した矢須子はこの黒い雨を浴びてしまいます。矢須子に縁談の話が持ち上がったとしても,原爆による体への影響を心配され断られてしまいました。私は,当時の人達は原爆による人体への影響を知らないというのは当然のことであり,また「知らない」ということがどれ程自分達にとって恐怖であるかがわかりました。黒い雨についても体内に取り入れても大丈夫とまでにはいかないにしても黒い雨を浴びるだけで,とても重い病気にかかってしまうなんて考えてもみなかったのではないかと思いました。その様子が,「あの頃なら,黒い雨のことを人に話しても,毒素があることは誰も知らんので,誤解されなんだでしょう」とあります。黒い雨によって矢須子は,どれ程苦しんだのか見当もつきませんでした。黒い雨による影響は,放射能によって本人が病気になるということだけではなく,世間から偏見の目で見られるということだと思いました。体も心も砕けそうになったと思います。そうやって人を苦しめたのが,黒い雨であり,原爆であり,戦争であるのではないかと思いました。当時の状況として心に焼きついたのは,横川神社の境内での血を流していなかった人は一人もおらず,中には赤ん坊の目に灰がたまっているのを母親が息を吹きかけて取ろうとしているところでした。生まれてきて間もない赤ん坊は,自分の世界がどのくらい悲しいことになっているのかもわからない,これから自分が生きようとしていた場所が原爆によってとても悲惨なことになっているのかすらわからないのではなかったのでしょうか。赤ん坊の未来さえも吹きとばしたのが,原爆でした。しかし,重松はその現実と向き合い,「被爆日記」を記すことに決めます。私は,重松が自らのつらい過去を振り返り,それを書き残そうと考えた意志に驚きました。普通人間なら,自分に起こったつらかったり,悲しかったりする過去は,思い出したくないし,それをましてや書き残そうということはしたくないはずです。そんなに強い意志を持ったのには,やはり矢須子の存在が大きかったのだと思いました。黒い雨で被爆し,縁談がなかなか成立しない矢須子のことを思って,必ず縁談を成立してみせるという固い意志があったからだと思いました。「被爆日記」には当時の状況そのままが,何も偽らずありのままに書かれていました。もちろん,矢須子が黒い雨を浴びてしまっているということもです。重松は,そのことを先方へ伝えることによって,当時のことを知ってもらい,矢須子の状況にも気付いてほしかったのではないでしょうか。矢須子が黒い雨を浴びたという事実を知られてしまうと,ますます縁談は成立しにくくなるにも関わらず。清書が完成に近づいたとき,矢須子は原爆病を発病していることがわかり,お医者からは,赤血球の量も半分以下で,白血球かもしれない得体の知れないものが多いといわれてしまいます。そこで,重松はあの日,矢須子を広島まで呼んでしまったことに責任を感じてしまいます。私は,重松が責任を感じる必要はないと思いました。全て戦争が悪いのであり,あの日に原爆が落とされさえしなければ,あの日(八月六日)の八時十五分に広島の時間は決して止まることはなかったでしょう。戦争は,人の心をも壊したり,操ったりすることのできる恐ろしいものだなと思いました。私は,この「黒い雨」を読んで,命の大切さを感じました。命といっても,人間の命だけではなく,物語中に出てきた鯉などの動物も含まれます。原爆に巻きこまれてしまったのは,動植物全てを指します。そして,多くの生き物の命を奪った残虐な行いを決して忘れてはなりません。そして,どんなことがあろうとも戦争は二度としてならないと思いました。当時,第二次世界大戦で,戦争でしか物事を解決できない,とても悲しい世の中でした。私だったらそんな世の中で生きたくありません。「黒い雨」もそう言っているでしょう。戦争のはかなさや悲惨を後世である私達は知り,それを次の代へと「伝える」ことが重要視されてくるのではないかと思いました。そのためには,この本を読むことからはじめて,戦争の残酷さを伝えていくべきだなと思いました。【小学生の部】最優秀賞:相馬 陽香(来見小3年)優秀賞:出内 里佳(油木小4年) 〃 :松本 知都(三和小5年) 〃 :田辺瑠彌捺(来見小6年)【中学生の部】最優秀賞:宮本  勁(神石高原中2年)優秀賞:赤木 花凜(神石高原中1年) 〃 :松本 亜純(三和中3年)【高校生の部】最優秀賞:矢野乃佳(上下高3年)優秀賞:梅岡 未来(油木高1年)【黒い雨の部】最優秀賞:矢川 大貴(油木高3年)優秀賞:川上 綾夏(油木高3年)(敬称略)なお,平成26年度神石高原町読書感想文コンクールの作品について,審査委員長岩崎文人(ふくやま文学館館長)さんに講評していただきました。また,全体の優秀作品集・総評を町ホームページに掲載しています。最優秀賞【黒い雨の部】神石高原町読書感想文コンクール入賞者決定町では読書への関心を高め,積極的・自主的に本を読むきっかけづくりとして,8月を「神石高原町読書月間」と定め,読書感想文を募集し468点の応募をいただきました。その作品の中から,各部門の最優秀賞・優秀賞を選び,12月20日,小畠交流会館で表彰式を行いました。表彰者には賞状と記念品が贈られました。入賞者は次の皆さんです。「教養のまち-神石高原町」52015 1月号

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