私学新庄55号
13/16

「一つのことに没頭すること」--初めて新庄を訪れたのは、入学する1ヶ月前の制服の採寸でした。「門も塀もない!死語が生きている!!」。高校受験に失敗し、見学すらしたことのない新庄高校しか通う選択肢がありませんでした。嫌々ながら通う。それが新庄での生活の始まりでした。そんな状況なので、もちろん学校生        いやつとは、一つのことに没頭できて活を楽しめません。特に目標もなく、授業態度は悪く、勉強を疎かにしていました。そんな時、担任かつ部活の顧問であった佐々木薫先生に、「カッコ良いるやつだろ。そして、そういうやつがモテる。お前に没頭できているものはあるか?」と言われました。勉強も部活も中途半端で、自信を持てることがなく、苦しい状況をどうにかしたい。そう思っていた時に、「一つのことに没頭できているやつがカッコ良い」という先生の言葉は、私を変える大切なきっかけとなりました。ちょうど高校2年生から、新しい教科として地理が始まりました。中原先生の地理は、最初の授業で、こんにゃくと玉ねぎを使って、プレートテクトニクスを教えてくれます。こんにゃくで手をべちゃべちゃにしながら、地球儀に貼り付けプレートの仕組みを教えてくれ、玉ねぎをかじって、地球内部が層になっていることを教え“graphy記述する”とは何かを模索をてくれます。わかりやすい解説と印象に残る教え方で、私は地理の魅力に引き込まれていきました。そして、地理の勉強に没頭するようになります。自分でテーマを探して研究するなど、地理を極めたいと思うようになりました。世界一の地理学者になることが夢になりました。大学進学後も、「一つのことに没頭できているやつがカッコ良い」という言葉を忘れず、地理学だけを極め続けてきたと思います。やがて他の学問から自分の地理学に活かすようになります。そうして、1つ目の博士課程では、地理学者としての魂を持ちつつ、東京都立大学大学院で「芸術工学」を専門に学びました。地理学から芸術工学へと移った背景には,地理学の英訳である「Ge-o-graphy」を「地の理を記述する」と訳し、まず地理学にとってのしたかったためです。いまは2つ目の博士課程として東京大学大学院に進学し、「情報学」を学んでいます。私にとって、地理学の使命は世界の新しい情報を収集し記述することにあります。地理学とは、「情報とその保存の在り方を深く探求すること」だと解釈し、情報の手触りや質感、そしてそれを司ることに向き合っています。私は、いまだに世界一の地理学者になることを目指して地理学研究を進めています。また大学で地理学者を目指すと同時に、地理学者として起業し、次世代データベースの開発をしています。現在、新庄高校と東京大学、ニューヨークの国連国際学校と連携して、生徒も先生も探究する教育カリキュラムの開発を進めています。私は、たまたま没頭できる選択肢が学校の教科にありました。しかし、学校の教科に没頭できるものがないことだってあります。スポーツ、料理、マンガ、ゲーム、音楽、芸術…何か一つ没頭できるものがあると、自分で人生を切り拓く状況を作っていけると思います。新庄での経験と、新庄という環境を活かすべく、最先端の教育研究を援用しながら、新庄ならではの探究カリキュラムを新庄の先生方や生徒のみなさん、卒業生たちと一緒に構築しています。研究室にて本校教員とともにイスタンブールにて1313地理学者田村 賢哉さん(高校60回生)同窓生は今・・・平成17年に入学された田村さん。現在は東京大学大学院博士課程の学生としての顔を持ちつつ、起業家として平成の最後の日にクラウドファンディング日本最高額となる2.76億円の資金調達を達成し、日々新しいことに挑戦されています。

元のページ  ../index.html#13

このブックを見る