私学新庄55号
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猛新庄学園同窓会の益々のご発展をお慶び申し上げますとともに、学園教育に深いご理解と温かいご支援を賜り、心より感謝いたします。さて、皆様もご存じのように、近年日本では、子供の幸福度や自己肯定感が他国よりも低いことが課題とされています。本校に入学してくる生徒たちも、決して例外ではないと感じています。そこで、現在、世界中で注目され始めた「Well-being(ウェルビーイング)」という概念について調べてみました。幸福学研究の第一人者である前野隆司教授など慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の皆さんによると、直訳すれば「よく在ること」を意味するこの概念も、「幸せ」を意味するものと考えられるそうです。一般に、幸せはHappinessと訳されますが、これはあくまでも感情的で一瞬しか続かない幸せを表します。一方、Well-beingは持続する幸せを意味します。いま幸福学に関する論文の多くでもHappinessではなくWell-beingが使われているようです。このように、ひとくちに「幸せ」といっても長続きするものとしないもののふたつがあります。幸せと結びつけられることの少なくない「お金」や「地位」は、もっぱら後者の幸せを生み出します。こうした「地位財」を手にしても、幸福感は一瞬しか上がりません。すぐに他人と比べはじめて、幸福度が下がってしまうからです。それに対して、自分自身の成長が実感できる自己実現や人と人との関係性のなかで形づくられた幸せは、長く持続されます。「ウェルビーイング」とは、持続可能な真の幸せを実現しようとする姿勢であると言えます。そう考えると、「ウェルビーイング」の理念は、本校が創立当初から大切にし校 長 荒 木   てきた第二代校長豊留アサ先生の「我は吾自らの光の中に生きん」という言葉と相通じるものだとわかります。私は、教師の役割を、預かった生徒たち一人ひとりが幸せな人生を送るために必要な基礎を築くよう導くとともに、幸せになるための確かな方法を伝授することだと考えています。幸せになるために必要な基礎とは、学力と人間性です。そして、幸せになるための唯一の方法は、「吾自らの光の中に生きん」=(自分自身を客観的に見つめ、個性や持てる才能を磨き、それを他者のため、社会のために活かす生き方を追求しよう)とすることであると思います。目先の幸せ、すなわち私欲を満足させることだけを考える人は、他者の犠牲や不幸を顧みなくなり、結果的に信頼を失い孤立し、自らも不幸になっていきます。一方、他者の幸福を願い、それを実現するために行動する人は、やがて多くの支援者や協力者を得て、一人では成し遂げられないような大きな社会的利益を生み、自身も確かな幸福を獲得していきます。ブランド力のある大学に入学することも、「お金」や「地位」と同様、それを目的に掲げてしまうと、幸福な人生を築くためには、むしろ障害となります。これは、より良く社会に貢献するための手段やプロセスとして価値あるものであり、目標として努力することは必要ですが、決して目的とすべきものではありません。新庄学園は、「我は吾自らの光の中に生きん」という言葉を教育理念として多くの有為な人材を育ててきました。明治の終わりに豊留先生が掲げられたこの教育理念は、この二十一世紀の現代にも通じる大切な教えであることを再認識しました。私たちは、これからも、豊かな人間性と感性を備え、高い志を持った生徒を育てて参ります。また、教科学力の伸張を図るだけでなく、それを応用し活用する力、すなわち新しい価値を創造する力を育み、地元や日本はもとより、人類の持続可能な発展に寄与する人材の育成を目指します。皆様におかれましては、引き続き新庄学園教育へのご理解を賜り、この学園から未来を変えることのできる人材を世に送り出すために、お力をお貸しいただきますようお願い申し上げます。幸せのキーワード「ウェルビーイング」33

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